弓と禅(読んだ本シリーズ12)

 

月曜なので読んだ本の紹介を

 

新訳 弓と禅
付・「武士道的な弓道」講演録
オイゲン・ヘリゲル (著), 魚住 孝至  (その他)
(角川ソフィア文庫)

 

 

著者のヘリゲルは、

東北帝国大学で哲学史を教えるため1924年来日し、

禅を理解するため弓道を学び、

阿波研造を師として稽古を重ね

在日中に5段の免状を受けたドイツ人哲学者です。

 

晩年、彼が日本での経験を綴った本は、

およそ100年前のお話でありながら、

何度も訳され解釈がつけられ

形を変えながら未だに受け継がれています。

 

 

弓道に限らず

無条件に型に習熟するように教育する稽古法

は、日本ではよく行われてきました。

 

無条件に型を行えるようになる

というのは、私はとても重要なことだと思いますが、

最近は軽視(どころか敵視)されがちですね。

 

型をまねて、ただただそれを繰り返させるような指導は

現代社会では「良い指導」とされず、

「先生、ちゃんと教えてください」

と言われてしまいそうです。

 

 

今の社会では、弟子の習熟を忍耐強く待つことができず

テクニックや意味をすぐに与える指導者と

意味や意義をすぐに求める弟子

になっているのではないでしょうか。

 

 

本著では

経験のみが教えられることを

考えだけで先取りしようとしない

という言葉もでてきましたが、

「経験でこそ習得できること」が信じられない

世の中になっているのでしょうね。

 

 

また、本著でも紹介されていましたが

日本の「道」では、

書道で墨をする

生け花で植物をまとめた麻紐を切る等

従属的な事前準備までも弟子に任せることなく

師匠が自らの手で行います。

 

いつも同じ、揺るぎない徹底さで。

全く省略することなく行うこの時間が

その後を高める意味をもつのでしょう。

 

 

弓道をとおして、禅や日本の思想を紹介する本、

もはや今では日本人がこのドイツ人の著書で

日本を学ぶというのは面白いものですね。

 

弓道は少しだけやっていたので

(高校時代弓道部でした)

「射法八節」

(弓を引く動作が8つに分かれて名前がついている)

など、弓道用語や道場の雰囲気など、

懐かしく読みました。

 

 

ちなみに、田舎の公立の進学校でしたが

弓道がうまい先輩は、偏差値も高かったです。

集中力、平常心、

同じことをただ繰り返し習い続ける姿勢が

身についていたのだと思います。