多様性の化学・読んだ本シリーズ60

 

水曜なので【読んだ本の紹介】シリーズですが、その前に・・・

ようやく統一地方選挙が終わりました。

私のいる岐阜県多治見市では、前半(県知事選)、後半(市長選・市議選)共に『大激戦』で、人口10万人の決して大きくはない田舎町はまさに『まちが分断してしまうのでは』と恐怖を覚えるような異様な盛り上がりを見せていました。

※選挙に興味をもって盛り上がること自体はいいのですが、盛り上がり方が『異様』だったのです。

 

 

誰に何を言われても「選挙には関わらん」を貫き通した私ですが、平成27年の多治見市女性活躍会議設置から市政には随分と関わってきました。

(市政に関する役は多すぎるのでここでは省きますが自己紹介ページに載っています)

 

選挙には関わらないタイプなのに、「私がなぜ大切な時間を割いて市政に関わっているか?」

 

自分の中でなんとなくもっていたその理由が、この本ではちゃんとした言葉で説明されていました。

 


 

今回の多治見市・市長選は、2名の立候補者で1つの席を争う形となりました。

 

「A陣営からは、『B陣営のこの話はウソ(数字の切り取り)で真実はこうだ』B陣営からは、『A陣営のこの話はウソ(数字の切り取り)で真実はこうだ』という話が出ている。どっちかがウソを言っている。ただ市民にはそれがどっちかわからない」

という話をよく聞きました。

私は、「どの主張もその人にとっては『真実』なんじゃない?」と返していました。

しかし、選挙戦が進むにつれて、まちは様々な話であふれかえり、その中で興味をもったことがあります。

(「興味をもった」とは不謹慎な言い方かもしれませんが、「面白い」と笑っていたわけではなく「どうしてこういった事象が起こるのか」と勉強したくなったのです)

 

①「B陣営は、ウソ、脅迫でAを攻撃し、怪文書でまちを混乱に貶めている。Aはそんなことをせず真摯に選挙を戦っている。」

「A陣営は、ウソ、脅迫でBを攻撃し、怪文書でまちを混乱に貶めている。Bはそんなことをせず真摯に選挙を戦っている。」

※AとBが逆転しているだけで内容は一緒

 

②「○○という理由で私はAさんを応援します。○○を目指すならBさんではなくAさん」

「○○という理由で私はBさんを応援します。○○を目指すならAさんではなくBさん」

※理由の○○の部分は同じでも、そこから導き出されたはずの結論であるAとBは逆

 

・・・このようなことが発生しているのです。

なぜ、このようなことが発生するのか。

その理由のひとつとなる概念もこの本で勉強することができました。

 


 

今週紹介するのは、この本です。

 

多様性の科学
画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織
マシュー・サイド・著

 

本

 

まず、前半(女性・育児中・働く母親・ひとり親家庭の私が、市政に関与している理由)の話をしましょう。

 

本の中では、CIAがアルカイダの攻撃を防げなかったことから始まり、税制改正、イングランドサッカー協会の例などもあげて語られています。

(題名で「科学する」と言っているとおり、語り口も面白いですよ。)

 

画一的な集団では、盲点も共通しがち。

しかも同調しあうため、それを強化しがちで、そのような環境では不適切な判断や完全に間違った判断にも自信をもってしまう。

優秀な人が集まったのにも関わらず「集合知」を発揮できない。

多様な人が集まり視点が多様化すればするほど、盲点は少なくなり、異なる意見が飛び出し、見つけられる有益な解決幅が広がる。

 

・・・だからキレイごとではなくて、意識高い系でもなくて、時代の流行りでもなくて、多様性が必要なんです。

 

家庭に時間に余裕のある専業主婦がいて(もしかしたら家庭にお手伝いさんもいるかも)、家事育児をしたことがなく(本人はしているつもりかもしれませんが家事育児の雑雑したところを当事者として担うことなく)、お金に余裕があって・・・

そういった人たちばかりが集まっている集団でとても良いことだと信じて善意で決めたであろう世の中の制度に「おい!!」と全力でつっこみたくなること、皆さんもありますよね?

 

 

さて、後半の話(なぜまちに相反する発言があふれたのか、その理由のひとつ)をしましょう。

 

「フィルターバブル」という概念は知っていました。

一度検索すると過去の検索に合ったものが勝手に目に入ってしまうグーグル等の検索アルゴリズムの話ですね。

この概念では、異なる意見に触れる機会が少ないのが特徴です。

 

今回この本で勉強したのは、「エコーチェンバー効果」です。

この本では、白人至上主義者のデルクとその大学の友人でありユダヤ教徒のマシューの例で説明されています。

 

こちらは、反対意見を排除していないのです。反対意見にも触れているのです。

ただ、反対意見を「不当化」するのです(「悪意のあるもの」としたり「間違った人たちによる間違った考え」「いい加減な人が発する嘘、デマ」としたり・・・)。

そして恐ろしいことに、反対意見に触れれば触れるほど(反対意見を不当化すればするほど)、自分の信念を強めるのです。

そして、集団としては、外の情報に触れれば触れるほど、内部の人間の忠誠心を高めるのです。

 

今の社会では、フィルターバブルよりエコーチェンバー効果のことを知っておく必要があるのではないでしょうか。

 

また、

「討論の相手に人身撃を仕掛けると、自身の信憑性も失うということを公人が理解すれば・・・(中略)・・・・討論の調子が変わって内容の質も高まります。」

という点も、肝に銘じておきたいと思います。

 

 

この本でよかったことは、

主義主張が簡単に変わるわけではないのは当然だ。

有意義な話し合いをするには、まず、信頼の構築が欠かせない。

とマシューが夕食会でデルクと接触するところ、信頼を構築するところから始めていたところです。

 

 

さて、この本はこの本、

まちはこれからどうなるのかな。

 

 

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真面目なビジネス系、組織論系、経営論系
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『雑食読書』の鈴木が毎週1冊本をご紹介いたします。

 

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