学校を改革する ・学びの共同体の構想と実践・読んだ本シリーズ90

月曜は【読んだ本シリーズ】。

先日の岐阜県内の教育長・教育委員が集まる研究総会のグループ討議で、海津市からの発表で出てきた東大の佐藤学先生の『学校を改革する』を読みました。

新版 学校を改革する

学びの共同体の構想と実践

佐藤学(著)

最近学校に参観に行ったことのある方は、学校が「先生からの一方通行ではない授業」を模索している様子をご存じかと思います。

私は、娘の授業参観の際に、「先生からの一方的な授業ではなく、協同的な学びを」と言って形ばかりのルールをつくることで、むしろ一方的な強要になっているのではと違和感を覚えたことがあります。

教育委員になって1年、たくさんの学校を観る機会を得て、また教育に関する話に触れる機会を得て、現場の先生方が様々な工夫をしてくださっていることを知りました。

とはいえ、スッキリしない部分も多くあり、「じゃあ、実際ところ、何を目指しているの?何が理想の姿なの?」という私の疑問への、ヒントになるかとこの本を読んでみました。

1,校長にビジョンはあるか。

この本では、学校の危機のひとつとして、あまりにも多くの玉が矢継ぎ早に投げ込まれていることを指摘。

それを必死に回しているだけの姿を筆者は「ジャグリング」と例えた。

そこで、「ビジョンをもたない校長は学校の外から要求されるすべての玉を回そうとして教師と生徒をつぶしている」とし、

「ビジョンを確かにしている校長は、不要な玉は脇に置いて、最も重要な玉だけを回して、教師と生徒をジャグリング状態から救出している」と語っている。

多くの学校を見せていただいた中で、これは本当にその通りだと感じる。

校長ひとりをみただけで、学校の雰囲気がわかる。

それはなぜか、校長が「何が大切か」を明確にかかげて、すべてがそれからぶれない言動をしているから、教職員もビジョンをもつことができ、努力の方向性に悩むことなく頑張れるのだと感じる。

2,目指すのは、「教え合う関係」ではなく、「学び合う関係」。「協力的学び」ではなく、「協同的学び」

共同的な学びを目指すときに「教え合う関係」と「学び合う関係」を意識して区別していないことも、共同的な学びの話題がスッキリしないことの原因かもしれない。

この本では、「教え合う関係」と「学び合う関係」は『決定的に違う』として、分けて語っている。

「教え合う」はわかっている子がわかっていない子に教える状態。

これでは、教師や仲間の援助を「待つ子どもを」育ててしまうとし、

恐ろしいことに、中学校、高校になると、ほとんど必然的に「恨む子ども」へと転じていくとさえ語っている。

自分を見捨てた教師、自分を見捨てた仲間という認識になるのだ。

子どもには、自らの力で窮地を抜け出す能力を育てなくてはならないと述べる中で、筆者は、

「他者を信頼し、他者に援助を求める能力を育てなければならない」と言っている。

3,授業を見るときは、教師の授業を評価するのではなく、どこで学びが成立したか、どこで学びがつまずいたかに注目する。

私は教育の専門家ではないので、そもそも教師や授業の評価をするような立場にはないと思っているが、それでも学校を見せていただき話をさせていただく中で肝に銘じたいこと。

教師の授業を評価したところで、教師は成長しないし、「見られること=嫌なこと」になってしまう。

著者は研究指定の弊害についても述べている。

「授業を公開しないことは、クラスや生徒を私物化すること」と筆者も繰り返し述べているが、私もそう考えている。

私が、学校や先生に対して憤るときによく言うことの一つとして、「他の大人の目が入らず、大人1人対子どもたくさんで過ごすことで、自分が正しい、自分がルールだと勘違いする」がある。

他の大人の目が入らないことは、弊害でしかないのだ。

しかし、研究授業など、教師は嫌がる(と思う)。

それはきっと過去に評価されてきたか、「評価される」と思っているからだろう。

では、授業を見る中で何を見るかというと、「どこで学びが成立したか」「どこで学びがつまずいたか」とのこと。

本

学校教育、そして学校教育に対しての政策について、スッキリしない思いを抱えることが多い中で、良いヒントになりました。

そして、教育委員としての研鑽にもなりました。

経営者、経営者さんと関わる者として
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・・・に留まらず、小説、学術系まで。
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