どうしても頑張れない人たち・読んだ本シリーズ61

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月曜なので読んだ本の紹介シリーズです。

先々週紹介した『ケーキの切れない非行少年たち』の続編です。

著者は医療少年院に勤務していた西口先生。

  どうしても頑張れない人たち

  西口幸治・著

『頑張ったら支援します』

世の中でよくあることですが、

『そもそも頑張れない人たちにこそ、支援が必要ではないか』

という問いからスタートします。

もちろんここで頭にあるのは、『ケーキの切れない非行少年たち』に出てくる医療少年院にいる少年たちです。

※丸いケーキを3等分するよう言われてもベンツのマークのように切れない、そもそも認知機能に問題がある少年たち。

1,「頑張らなくていい」は本当か?

著者は、最近の流行っている『頑張らなくていい』というメッセージに警告を鳴らします。

「頑張らなくていい」「その子の特性に合ったものをやらせて褒めてあげる」「そのままでいいんだよ」という言葉が注目され、『良いもの』として使われているように思います。

学校にいる間はそれで良いのかもしれませんが、実際のところ、社会では何らかの形で頑張らなくては生きていけないのです。

「頑張らなくていい」という安易な言葉がけは、無責任でもあり、子どもが抱えている問題を先送りにしているだけなのです。

(もちろん、鬱になるほど頑張っている人にさらなる頑張りを要求したり、大人が子共に対して過剰な期待を押し付けたりするのは論外ですが・・・)

そもそも、「頑張らなくていい」などと、親や先生が勝手に決めてよいものなのかと著者が言うように、

子ども本人は「他の子と同じようにできるようになりたい」と思っていることも多いのです。

2,話は「ただ聞くだけ」。

子どもが「実は・・・・」とポツポツと語りだした話を、どれだけ我慢強く話の腰をおらずに最後まで聞いたとしても、「でも、それは・・・」などと言ってしまっては、子どもは心を閉ざしてしまいます。

アドバイスがほしいわけでもなく、気持ちをわかってほしいだけ、受け入れてほしいだけの子どもに対しては、相手の話が終わっても何もコメントしない方がいいくらいと、少年院の教官の例をあげて説明していました。

これは、「一生懸命途中で口を挟まずに聞こう」ということすら難しくて努力しなければできないことですから(私が未熟なだけかしら?)、本当に気をつけていなくてはできませんね。

3,まずは子どもに好かれること

私たち大人にとっても、同じことを言われるにしても、「誰に言われたか」は重要ですよね。

嫌いな人に励まされたとき、愛情のない指導をされたときは、なかなか聞けない一方、

好きな人・尊敬される人に褒められれば頑張る気になりますし、多少厳しくても愛情のある指導であれば聞けるというものです。

少年院の教官も「まずは子ども達に好かれること」と語っています。

「好かれると言うのは、決して甘やかすとか、機嫌をとるということではない。子どもに笑顔で挨拶する、名前を覚えている、最後まで話を聞く、子どものやったことをちゃんと覚えている。そんな人と人との基本的な関係だ」と続きます。

ちなみに、この話はこの1冊の本の中で2回出てきていますので、著者にとってよっぽど重要なことなのでしょう。

4,頑張れない人を支える続けるには

「頑張ったら支援する」といったような『条件付き支援』であれば、「頑張れなければ見捨てられるのでは」と『見捨てられ不安』を抱くので、わざと不適切な行動をして支援者がどこまで見捨てないかを試す『試し行動』が発生します。

小さな子どもならわかるところですが、特にこれまでの生育環境に問題を抱えてきた非行少年たちは大人になっても同じようです。

これをこの本では、「周囲の気をひいている」と捉えるのは支援者側の言い分であり、実は本人にとっての「助けてほしい」というサインだと捉えることを提唱していました。

頑張るためには、『安心の土台』が必要なのですから。

そして、励まして頑張らせるのではなく、見守ってあげるのが、安心の土台となる行為です。

5,他者からの評価

「頑張っている=評価される」とこの本の冒頭でも定義づけがありましたが、本の終盤でも「この社会は他者からの評価がすべて」と著者は言います。

『すべて』は言い過ぎかもしれませんが、実際に「頑張ること」に「他者からの承認」が重要な要素であることは間違いないでしょう。

著者は、「5日中4日はできたね(1日できていない)」や、「コップに水が半分『も』入っている(半分『しか』ではない)」などといった、ポジティブ転換の言葉遊びにも『NO』を突き付けています。

現実は変わらないのに「それでよし」としてしまえば、将来社会にでて被害にあうのは子ども達だと。

そして、上っ面で「褒めるスキル」をいくら使っても、相手はそれを見抜くと言います。

「適切に褒める」というのは「相手が何をしていたのかを具体的に見ている」ところに意味があると。

土日がJC(青年会議所)のイベントごとで終日×2日間拘束されていているときは、

『そもそも興味があって読みたいと思える本』かつ『さっと読める本』を選ぶことになるのですが、

先々週といい、今週といい(どちらも土日が終日JCごとでした)、西口先生の本でした。

私は、多治見市の教育委員をやっており、この本を選んだのは「自分の知っている(想像できる)子ども」以外に対しても理解を深めたいからだったはずでなのですが、「自分の知っている自分の周りの世界」でも使える、勉強になる話がたくさんありました。

経営者、経営者さんと関わる者として
真面目なビジネス系、組織論系、経営論系
・・・に留まらず、小説、学術系まで。
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