娘のクラブが地区大会ではなく県大会まで進んだため、予定していた娘との夏の旅行がなくなり、帰省する姉と遊ぶ予定が台風直撃のお盆。
まあ、常日頃から「自営業だから365日仕事で365日休みだよ」と言ってる私ですし、よく遊びに行っているので、特段悲しくもないのですが。
ただ、しっかり時間をとって「自己啓発本」ではなく「時間をかけて読む本(小説系)」を読みたい欲はありますね。
さて、今週の本はなんだか、著者といい、タイトルといい、そそられてしまったコチラ。
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世間とズレちゃうのはしょうがない
養老 孟司 ・ 伊集院 光 著
子どもの頃から、「世間とズレてしまうこと」に怯えてきてズレないようにと生きてきた(結局ズレているのですが)伊集院さんと、「自分と世間はズレている。仕方ない。」と世間を見ている養老さんの対談形式の本です。
伊集院さんのトークからは、相手に対する気遣いと論理性が感じられるのですが、それを超越するような養老さんのトークがとても良いのです。
「解剖学なんて、学問としては杉田玄白で終わり」という発言が、東大医学部の解剖学の先生の口から出てくると思うと、めちゃくちゃ面白いですね。
1,人間は言葉で線を引く
「仕事とプライベートを分ける」というのも良い例ですが、解剖学をやっている養老さんのトークからは言葉で線を引くことの、曖昧さや無意味さを学ぶことができました。
例えば・・・「『口』を持ってこい」と言われても、切り取ったらその部位は『唇』なんですよね。「口」というものは存在しない。
2,価値観が崩れる体験
終戦を生きた人はこれまでの価値観がガラっと変わることを経験としてもっている。
今の世の中も、価値観は変化しているので、「それも正解じゃないかもしれない」「それだっていつか変わるかもしれない」「どうせ永遠じゃない」そう思えれば強いですよね。
3,都市において、意識で扱えないものは排除される
都市は人間の意識で考えられたことに基づいてつくられた場所で、意識の中で自然は「扱えないもの」として排除する。
自然だけでなく、「意識で扱えないもの」を嫌う傾向は強いと思います。
多くの人が「わからないもの」は嫌い。だから無理やりひとつのルールや文化に染めようとしたり、そこに染まらない人をはじき出そうとするのではないでしょうか。
4,人の意識は主人公になる
人は意識がすべてを支配していると思いたがる。
伊集院さんが例として挙げたのは・・・プロ野球選手より速い球を投げるピッチングマシンができると「ひとりで練習できるようになる」と歓迎するのに、「将棋でAIが棋士に勝った」となると、急に怯えるということ。
「意識」や「知識」、「考えること」は人間側の領域のことであって、それは『絶対』で『他をコントロールできるもの』であってほしいと、どこかで思っているのでしょうね。
5,人間はノイズ・「本人」が嫌
養老さんの銀行での本人確認の話はとても面白いものでした。
「担当者は、僕が養老であることをわかっている。でも保険証がなければ、僕は養老ではない。うちの猫に僕の保険証をもって行かせたらいい」というお話。
当の人間がそこにいるのに、直接話さずにメールで話をする(電話も嫌い)という最近の風潮は、『本人が嫌』だから。
人間は(機嫌が悪かったり等)意味不明だから。
データや報告は欲しいが、それ以外は請け負いたくないのです。
「そのうち『人間いらない、全部データで』となるのでは」と言う伊集院さんに、「人がいらない社会をつくってどうするんだろう」という養老さん。
私も「なぜこんなに長い話、相手の反応という不確定要素を含むような話、証拠を残さない方がいい話、勢いがあれば変えられそうな話なのに、直接話に来たり、電話したりせず、Lineなのだろう」と(自分より若い人に対して)思うことがあります。
「私たちの世代とは、時間の使い方、ツールの使い方に対する価値観が違うのだろう」と自分を納得させていましたが、これを読むと・・・考えさせられますね。
そもそも私は、世間とマッチしているともマッチしたいとも思いませんし、自分の力や人間の努力や意識ですべてがコントロールできるとも思いません。
だって、震災で家族を亡くした人に「君の努力が足らなかったからだよ」なんて思わないでしょう。
世間を冷静に見つめて、世間と上手に折り合いをつけながら生きていくのがいいですね。
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