過去、「本屋大賞」を受賞し、深津絵里さん主演で映画化もされているので
「なんとな~く」記憶にあったものの、
ふと娘の口からこの本のタイトルが出たときに読みたくなって・・・
今週の【読んだ本シリーズ】は久々に小説です。
博士の愛した数式
小川 洋子 (著)
記憶が80分しかもたない数学博士と、その家政婦となったシングルマザーと息子のお話。
・自分の子どもが誰かに愛され守られているのを見るのは幸せ
この小説に出てくる母子家庭のように親族がいないわけではないものの、
子どもと2人で暮らしてきた私には彼女の気持ちがよくわかる。
私も自分の子どもが誰かに抱擁されているのを見たら幸せだろう。
現実の生活では抱擁は難しいが、親族でなくとも娘が
この小説の博士のように目の前にいる弱い者を守ろうとする気持ちにあふれた大人と接する姿を見たとき、
幸せな気持ちになる。
この小説では、主人公が博士のことをこう表現している。
「小さき者の正当な庇護者」
・正解は静けさ、「わからない」はワクワク
賢い人は「わからない」を恥としない。
この小説の中の博士に関しても
「わからないという言葉を惜しげもなく使う」
と主人公が博士の不思議として挙げている。
わからないのは恥ではなく、新たな真理への道標なのだ。
そして、正解がもたらすのは静けさだ。
この「静けさ」の形容がまた素敵なので引用する。
あるべきものがあるべき場所に収まり、
一切手を加えたり削ったりする余地などなく、
昔からずっと変わらずそうであったかのような、
そしてこれからも永遠にそうであり続ける確信に満ちた状態。
・人生の究極の目的は何か?子どもの気が済めばそれでいい。
主人公と息子が博士のプレゼントにするため
特別な野球のカード(昔のお菓子のオマケ。今はプレミア)を探していたときのこと。
たくさんの時間を費やしてあらゆる場所を探し回って
膨大なカードをチェックしていたとき(そして実はお目当てのカードが見つかる直前)
の主人公の心の中
1枚のカードにさえ巡り合えないとしても、腹を立ててはいけない。
イライラする必要はない。
ルート(息子)の気が済めばそれでいい。
私は、子どもが言い出したことでも、2人で言い出したことでも、
自分もそのために時間をかけていると
ついそれが達成されることに気持ちがとらわれてしまう。
達成されないことにイライラしてしまう。
これだけ時間と労力をかけて
「子どもの気持ちが済めばそれでいい」
と思えるだろうか。
なんのことはなくさらっと書いてあった部分ではあるが
心に留めたい言葉だ。
(そしてこういうのが小説のいいところだ)
全体的に、小さな子どもと2人で生きてきた私には涙、涙の小説でした。
そしてまた、学ぶことの楽しさを教えてくれた小説でもあります。
経営者さんと関わる者として
真面目なビジネス系、組織論系、経営論系・・・に留まらず、小説、学術系まで。
『雑食読書』の鈴木が毎週1冊本をご紹介いたします。