今週の本は、この度の夏の甲子園で優勝した慶應義塾高校野球部の監督・森林(もりばやし)さんの著書です。
甲子園で慶應義塾高校が優勝したその日に購入しました。
同じ考えの方が多いようで(そう出版社も見込んでいるようで)、重版が決まっているようです。
私自身、大学は早稲田でしたし、その中で応援部に4年間を捧げ、早慶のつながり・六大学のつながりの中でたくさんのことを学んだので、慶應(大学ではなく高校ですが)の活躍は嬉しく思います。
YouTube配信で慶應義塾高校の野球応援を視聴しましたが(野球じゃなく吹奏楽部の演奏を聴く吹奏楽部経験者あるある(笑))、超ハイトーンプレイヤーのトランぺッター、吠えまくりのホルンプレイヤーがいて、「楽しくて楽しくて仕方ない!!」という感じが音だけで伝わってきて、私も楽しくなってしまいました。
彼らが大学で応援指導部に入部したら東京六大学応援団連盟中の話題でしょうね。
ところで、なんだか世間では、「慶應の応援」がトレンド入りして、賛否両論(「否」の方が多いのかしら?)あるようですね。
本気で応援部をやってきた身としては応援の考えにプライドもあるし、生徒たちの応援とは違うところの話だと思うし、なんといっても野球部がこれまでやってきたことがメインであるはずなのに・・・早くこの話題が終わればいいのにと眺めています。
・・・
さてさて、肝心の本の紹介にまいりましょう。
Thinking Baseball
慶應義塾高校が目指す”野球を通じて引き出す価値”
森林 貴彦 ・著
「高校野球の常識」に対し挑戦を続ける森林監督のお話です。
「非・坊主」「脱・根性論」というのは、「慶應」というイメージも相まって「高校野球の常識に一石を投じる」と話題にあがっていますが、全体的に、今にはじまったことでも、森林監督だけがやっていることでもないでしょう。
(慶應高校で坊主強制の部活に部員が集まるとは思えませんし、そもそも創設時から髪型を強制するような文化は慶應にはなかったはず)
地方にいるとあまり出会うことがないですが、中高から慶應の方は本当に自分の頭で考えることができるうえ、その自分の頭で考えたことに対して自信をもっており、その分他の人の考えにもリスペクトがあるイメージがあります。
本の中でも慶應義塾の「独立自尊」(自分の考えをしっかりもつ。結果として他人の考えを尊重する)という考えが紹介されていました。
おそらくそれが、慶應義塾が貫いている人づくりのテーマであり、(人気校ゆえに入試の時点でその素質がある人を集められるでしょうし)日々の教育活動の中で力を入れているところだと思います。
森林監督はただの「野球の監督」ではなく、「慶應で育った慶応の教育者(慶應出身で慶應の小学校の先生)」ですから、「自分の頭で考える」をしっかりと生徒たちに身に着けさせることができたのだと思います。
「監督」というより「教育者」である人が、教室だけでは学べないことを学ばせてくれる。社会に出る前の人間形成のうちの大事なひとつ。そのための部活動。
森林監督の例を見ていると、部活動を教員・教育から切り離す昨今の日本の教育改革の議論が本当に子ども達のためになっているのかと疑問を覚えます。
さて、話がそれましたが、この本の中で「スポーツマンシップ」について話している箇所に惹かれました。
森林監督は、スポーツマンシップをこう説明しています。
相手、ルール、審判を尊重し、敬意を持って接する。勇気を持っていろいろなプレーに挑戦し、強い相手にチャレンジしていく。どんな結果になろうとも、覚悟を持って、きちんとそれを受け入れる。
このスポーツマンシップを学べるのが高校野球の価値のひとつであると。
スポーツマンシップとは、スポーツをする人だけが身に着けるものではありません。
これが身に着けられるように彼が普段から言動に配慮しているのが本から読み取れます。
この力を10代の時期に身に着けられるのであれば、それは人間として大きな財産でしょう。
また、生徒たちに自己分析をさせて、自己評価と他者から見た評価のずれを直していく作業をしている旨の記述がありました。
これこそ、今の子ども達に必要なことで、社会に出た際に彼らを部下にもった会社の上司たちが悩んでいることかと思います。
昨今の教育では自己肯定感を高めること、できないことよりもできることを見て褒めることが良しとされており、「社会で通用する人間をつくること」が学校の役割ではなくなってきているように感じます。
子どもが自分で得意だとしたことを、
申し訳ないけど、それは大したことないよ。
と言う先生は、今どきなかなかいないですよね。
それをやっている森林監督は本当に、自分で考えたことに責任をもって、勇気をもって行動できる、慶應の「独立自尊」を体現した教育者なのだと思います。
おそらく、他の高校でもこの本で書かれている慶應義塾高校野球部のような「脱・昔の根性論野球」といった取り組みはやっていることと思います。
そうであったとしても、「慶応」という世間のイメージから色眼鏡で見られ話題にされやすいのが、慶應義塾高校野球部。
そして、注目をあびるからこそ世間に対して発信できることも大きいのです。
森林監督はそれをわかっているからこその発信だったかと思います。
ちなみに、この慶應義塾高校野球部の森林監督の著書は有料でしたが、準優勝の仙台育英高校野球部の須江監督の著書はアマゾンの読み放題に入っていましたので、仙台育英高校野球部の監督の話も読んでみたいと思います。
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