今週は珍しく小説。
読書は雑食なので小説も読みます。
小説なので、いつものように3点覚えておきたいことを書き残すのが難しいのですが
これはもはや『型』なので、今回も3点残しておきます。
天国からの宅配便
柊サナカ (著)
依頼人の死後、依頼されたものを指定された人に渡すという宅配便の物語。
1,自分を隠したまま見守り続ける。ただそれだけでいい。
病気の女の子が、好きな男の子に「結婚した」とウソをついたこと。
年月が経った現在、彼の行動パターンを知っていること。
小説内で明確に種明かしされることなくお話は終わりますが、
女の子が、容姿が変わってしまった自分のことを、
自分であるとわからないように(はたから見ると病気のおばあさん)
彼の近くでただ黙って彼を見守っていた。
彼に気づいてもらえることなく。
声をかけるでも、自分の存在を感づかせるでもなく
ただただ見守っていたことが最後にわかり、
(自分が病気でも)大切な人が健康に生きていてくれること
ただ姿を見ることができること
それが幸せなのだと教えられました。
(第3話『午後10時のかくれんぼ』)
2,同情されるのも謝られるのも嫌だから言わない。言っていないのだから理解されなくて当然。
登場人物の中のひとりの女の子。
家が貧しく母親は働き詰め(母子家庭に対するこのステレオタイプ嫌いだけど)、
祖母が家事と子育てを担ってくれていたが
祖母は手が悪く、手にスプーンをベルトで巻き付けて食事をとっていた。
そんな家庭で育った女の子が、お箸の持ち方で笑われてキレた。
数年経ってその経緯を主人公に話したときに彼女が
同情してほしくない、憐れまれたくない。
謝られたくない。
だから言っていない。
言っていないから誤解されたまま、自分が悪者にされたままなのは、
仕方ないと割り切っている。
(暴力を奮っているので悪くなくはないが)
相手に対しての恨みや怒りの気持ちではなく、
「自分の意思で、自分が言わないから」
この結果になっていると捉えているのが立派。
自分の意思、自分の選択と考えられる
自立した人物だと思う。
(第4話『最後の課外授業』)
3,先生は目立たない子のことも見てくれていた。覚えてくれていた。
主人公は自分のことを
「人の顔色ばかりうかがう目立たない人間」
と評価している。
「真面目さは貧乏くじ」だとも。
そうして生きてきた彼女を含む、サイエンス部のメンバーの長所や過去を
顧問の先生がしっかり見てくれていたこと、
話を聞いてくれていたこと、
覚えていてくれたことを彼女たちが知ることができてよかった。
目立つ子、問題児にばかり目がいっているわけではない。
やはり学校の先生はすごい。
(第4話『最後の課外授業』)
死後に届けられるものは、残された者の心を強く前向きにするものであって
その内容は『遺品』という単語でくくれないものだと感じました。
経営者さんと関わる者として
真面目なビジネス系、組織論系、経営論系・・・に留まらず、小説、学術系まで。
『雑食読書』の鈴木が毎週1冊本をご紹介いたします。