パレスチナとイスラエル・読んだ本シリーズ87

 

今週も月曜は「読んだ本シリーズ」

恥ずかしながら、最近のイスラエル、パレスチナのニュースを読んでいても、なんだかイマイチわかっていない自分がおりまして・・・

小学校?中学校?の社会の資料集(教科書かな?)で「嘆きの壁」の写真を見たことくらいは覚えているのですが、宗教的にも地理的にも民族的にも(石油的にも??)昔から紛争の多い地域であることくらいしか頭になく、

「新聞の記事を見ても文字をなぞるだけで理解できていないから、ちょっと1冊読んでおかなくちゃ」

とイスラエル、パレスチナの問題を解説する本を探しました。

 

なるほどそうだったのか!!

パレスチナとイスラエル

高橋和夫 (著)

 

1,問題はいつ頃に怒り、何が問題か。誰と誰が争っているのか。

 

例えば、「2000年に及ぶイスラム教徒とユダヤ教徒の対立」と謳うのは乱暴すぎる。

(実際そこにはキリスト教徒もいる。そもそもイスラム教が成立したのは600年代なので歴史は1400年ほど)

 

これは、どのニュースを読んでいても、どこから情報をとっても気をつけておかなくてはならない大事なことだが、「あまりに単純でわかりやすい話はしばしば危険」である。

 

問題は、120年ほど前(19世紀末期)にヨーロッパのユダヤ人たちが「自分たちの国を創ろう」(シオニズム)とパレスチナに入ってきたところから始まる。

商才で生きている人が多かったユダヤ人だが、そこにいたパレスチナ人を雇わず自分たちで農業をはじめたのでパレスチナ人が土地を追われる形となった。

 

 

2,テロとゲリラの違い

 

第二次世界大戦の終末期に、パレスチナに自分たちの国を創りたかったユダヤ人のシオニストたちは、それまでナチスドイツと戦うイギリスを支持していたがユダヤ人たちだが反イギリスに転じた。

 

その説明の中で印象深いのが、「テロとゲリラの区別は、あいまいである」という記述。

ゲリラとは、民間人などの間に身を隠し隙を見て攻撃する、夜間に攻撃することなど。

テロとは、政治的な目的を達成するために暴力を行使すること。

 

筆者は、たいていの場合

攻撃をしかけている側は自分たちのことを「ゲリラ」と呼び

攻撃を受けている側は、それを「テロ」と呼ぶ

と述べている。

 

この「ゲリラ」や「テロ」といった言葉ひとつとっても、ニュースを読む中で、その書き手がどういったスタンスにたっている人間かがわかる。

(ロシアのウクライナ侵攻でも感じたが、「ロシアが一方的に主張している」など、伝える人の主観が入った記事になっている)

 

 

3,パレスチナ人の話を現実的にイメージすると

 

この本では、歴史の中でどこにどう線が引かれたか図で見ることができる。

どこにどんな属性の人がどのくらいいたかも図で見ることができる。

 

そして、本の最後にパレスチナ人の居住地に関する話がある。

ガザ地区は面積でいうと、種子島くらい(365平方キロメートル)。

種子島の人口は3万人。ガザ地区の人口は150万人なので種子島の50倍ほど。※情報が古いので現在の情報を下に書いています。

さらにヨルダン川西岸地区には240万人のパレスチナ人が生活している。

 

また、レバノン、シリア、ヨルダン等の周辺諸国に難民となったパレスチナ人とその子孫が、さらにはアメリカ、カナダ、ヨーロッパにも多くのパレスチナ人が生活しており、その数は500万人ほど。

世界全体でみるとパレスチナ人は1100万人となる。

 

しかし、「パレスチナ人」はいるけれど、「パレスチナ国」はない。

あるのはガザ地区とヨルダン川西岸の「パレスチナ自治区」

これが現実の社会。

 

 

※本の発刊は2015年。
ガザ地区の人口は、2023年では222万人とされている。
そして、種子島の人口は、2023年では1万5千人とされている。

 

 

発刊が8年ほど前で情報が少し古いのですが、時代を追ってこれまでの経緯を知ることができますし、1冊の中で何度も繰り返して説明があるので良い入門書かと思います。

また、本を読まなければ学べなかったであろう、近代国家とゲリラ組織の交渉力の違い(ゲリラ組織の方が一枚も二枚も上手)である話や、政府の関わらない民間のテレビ局が出来たことで社会が変わった話も、興味深いものでした。

 

 

経営者、経営者さんと関わる者として
真面目なビジネス系、組織論系、経営論系
・・・に留まらず、小説、学術系まで。
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